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29 December 2008

イタリア旅行記 - Vol.7

さて、お正月も近づいてきたので、そろそろ自分の心をイタリアから日本に引き戻すためにもフィデリオの感想を書かなくてはなりません(理屈はいいから早くしろ~coldsweats01

実は、このフィデリオを聴くまでに、一波乱も二波乱もありました。
必死の思いが通じて手にしたチケット・・・そしてそのフィデリオは私のアバドへの想いをどう変えたのか・・・。

まだまだ中途半端でうまくまとまりませんが、こちらも "とりあえず" UPいたします!

11月28日(金) rainsnow
7日目 ~モデナのフォデリオ

ボローニャは朝から冷たい雨 rain
時折雨足が強くなり台風のようなお天気です。

幸い特に予定はなかったので、駅に行って明日の空港行きのバスの時間を確認したり、お土産を買いに出た以外は、夜のオペラに備えてホテルの部屋でゆっくりと過ごしました。

モデナはボローニャから電車で20分ほど。レッジョの手前になります。
せっかくなので、天気が良ければ午後はモデナ観光でもしたかったところですが、オペラ鑑賞に行く格好でこの雨の中を歩き回るのはしんどいのでやめました。

いつもはのんびり屋のだんなが、この日は珍しく余裕を持って出かけようと言い出だしました。レッジョのこともあったので、今回は早めに現地に着いて安心したかったようです。支度をして5時過ぎにボローニャの駅へ向かいました。

冷たい雨に濡れるボローニャ駅。

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駅に近づくにつれ、何だかイヤ~な予感がしました。

駅の入り口やホームに人がごった返しています。最初は "夕方のボローニャ駅はこんなに混雑しているのかcoldsweats02" とビックリしましたが、よく見るとみんな大声で何か叫んだり駅員に詰め寄ったりしているので、すぐに異常事態であることに気づきました。

自分の乗る電車が発車するホームへ行こうと移動を試みましたが、地下の連絡通路は身動きもできないほどの人で埋め尽くされ、叫び声やうめき声の中で、一瞬テロでも起きたのかと思ったほど。テロじゃなければストライキか?wobbly

この時、楽しみにしていたフィデリオがどんどん遠ざかっていくような気がして頭が真っ白になりましたsad

どうやら電車はダイヤが大幅に乱れているようで、これ以上乗り切れないほど満員になった電車の窓から乗客たちが顔を出して 「早く発車しろー!」 などと言っています。

ようやく見つけた駅員にモデナに行きたいと告げると 「9番のホームから発車する電車に乗って待ちなさい」 と言われたので、9番のホームにいた別の駅員にも再度確認をして電車に乗り込んで待ちました。
もしこの電車が18:30までに発車しなかったらタクシーで行こうと決め、肝を据えて待ちました。ようやく "この電車は18:14分の発車です" というアナウンスが聞こえた時はほっとして、それまで張り詰めていた緊張感がほぐれて涙が出てきましたweep

どうにかモデナに着きました。

ボローニャでの騒動が信じられないほどモデナの駅は静かです。
そして、駅を出るとなんと辺り一面に雪が積もっています!

電車が遅れた理由はどうやらこの雪だったようです。
この時はもう小降りになっていましたが、積もっている雪の量からして一時はかなり降ったのでしょう。気象が原因では文句のつけようもありませんが、早く出たお陰でオペラには余裕で間に合いそうだったので、まずはホッと一安心。

Teatro Comunaleまではタクシーで行きました (ちなみに、このタクシーの運ちゃんには "テアトロ・コムナーレ" より "パバロッティ劇場" のほうが通じました(^^;)

モデナの歌劇場はとても素敵な建物でしたが、ぼんやりしていると通り過ぎてしまうではないかと思うほど、通りに面してごくごく普通に建っていました。夜だったからそう感じたのかもかもしれませんね。

Teatro Comunale di Modena

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ホール入り口に貼ってあったフィデリオのポスター。

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さて、実はこの時まだチケットは手元にありません。

今回は、レッジョのコンサートもそしてこのモデナのオペラも、チケット獲得にご尽力下さったD氏の立会いがないと受け取れないという条件になっていました。
レッジョではスムーズに受け取ることができましたが、この日は例の電車の遅れでD氏の乗ったミラノ方面からの電車が開演までに間に合わず、何とか頑張って状況を伝えてチケットを受け取って欲しいとの熱い要望がD氏より私の携帯に入りました。

逆境にはめげないタイプです。
この時も不思議と "大丈夫かな~" などという不安はみじんもなく、「わかりました。やってみますね!」  と電話を切り、スタスタとBiglietteriaへ行って、チケット受け取りに立ち会ってくれるはずのD氏が電車の遅れで間に合わないこと、でも私たちはどうしても聴かなければならないことを必死の思いで伝えました。

受付の美しい女性は私の拙いイタリア語を一生懸命聞き取ってくれ、予約リストにあるD氏の名前を見つけた私が指差すと、ニッコリと頷いてチケットを渡してくれました。その女性が女神様のように見えました。そして確信しました。

一途で真剣な思いは絶対に通じるんだsign01 と。

席はバラバラになる可能性が大とのことでしたが(レッジョは少し離れていました)、渡されたチケットを見ると二人とも同じPalco席でした。

すぐにD氏に報告をすると 「よかったぁー!」 と心から嬉しそうで、その声を聞いた途端、チケットを手にできた喜びが一気に膨れ上がりました。本当に感謝でいっぱいすheart04

ようやくフィデリオを聴く条件が整い、席へ急ぎました。

席は舞台に向かって右手3階のPalco席。
アバドの姿も舞台もよく見えて最高の席です!アバドのフィデリオが初のPalco席での鑑賞となるなんてこれ以上の喜びはありません。
実際、この席のお陰で最高の集中力でこの素晴らしいフィデリオを楽しむことができました。

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=== 20:00 モデナのフィデリオnote ==========

 指揮:クラウディオ・アバド
 マーラー室内管弦楽団

 ベートーヴェン: 歌劇 《フィデリオ》

 (2008年11月28日 / テアトロ・コムナーレ, モデナ)

Personaggi e interpreti
Leonore
Anja Kampe
Florestan Christian Franz
Don Pizarro Albert Dohmen
Rocco Giorgio Surjan
Marzelline Rachel Harnisch
Jaquino Jörg Schneider
Don Fernando Diogenes Randes

Direttore Claudio Abbado
Regia Chris Kraus
Scene Maurizio Balò
Costumi Annamaria Heinreich
Luci Gigi Saccomandi
Direzione artistica dei cori Erwin Ortner

Mahler Chamber Orchestra
Arnold Schönberg Chor
Coro de la Comunidad de Madrid

(出演者一覧:Teatro Comunaleのサイトより)

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・

ピットにはマーラー管のメンバーが揃い、いよいよ大きな期待の拍手に迎えられてアバドの登場です。

アバドはこの日も燕尾服ではなくスーツ姿です。客席に向かって一礼すると、レッジョの時と同様、拍手が止まないうちに序曲が始まりました。

歯切れの良さは予想通り。でも迫力と表現力の豊かさは予想をいとも簡単に打ち抜かれてしまいしょっぱなから面食らいました。

席の関係もあるかもしれませんが "フィデリオの序曲ってこんな曲だったっけ?" と驚きの連続でした。まだ序曲だというのに・・・coldsweats01。プレストのコーダに入るとアバドの指揮はますますシャープに切り込んでいきます。うーん、これはもう爽快の一言sign01

【 第一幕 】
舞台左手に置かれた大きなギロチン台のそばでヤキーノとマルツェリーネの会話が始まります。紗幕が効果的に使われ、時々ロッコがヤキーノを呼ぶようなジェスチャーが影絵のようになって迫ってくるのが印象的でした。

マルツェリーネのフィデリオへの想いを歌うアリアは切なさから喜びに移りゆく表情が素晴らしく、それに続く四重唱の美しさにも泣けました。それぞれの歌が楽器の役割をしているかのようで、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲2楽章を髣髴とさせるような部分もありました。その後のレオノーレとマルツェリーネの掛け合い、そしてロッコが加わる三重唱に至るまで一気に聞かせてくれました。それぞれの歌手たちの力量とバランスがよく、音楽的な素晴らしさを改めて感じさせてくれた気がします。

歌が一段落した後は、リズム感抜群のアバドの手にかかった行進曲が始まります。メリハリの効いた演奏で、しばし歌に浸っていたあとの器楽の歯切れよさが何と新鮮に心に響いてきたことか。今までCDで何気なく聴いていたこの行進曲が、一夜にして思い出の詰まった特別な曲となってしまいました。

行進曲の間に舞台が入れ替わります。それは、2002年のパルシファルを髣髴とさせるような舞台でした。
( ※ 舞台の写真はすべてプログラムに掲載されていたものです)。

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車椅子に乗って勢いよく現れたピツァロの登場も実に印象的・・・というより衝撃的ですらありました。車椅子から立ち上がり、杖をついての熱唱でしたが、このピツァロ役のドーメンの張りのある声とその姿が一瞬にして舞台を緊迫感で包み込み、強いインパクトを与えていました。

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そして、レチタティーヴォから始まるレオノーレのアリア。ただただ聞き惚れました。勇ましい女性の姿は感動的です。さすがにこのアリアのあとでは拍手が起こりました。バックのホルンもよく頑張っていました!

一幕のフィナーレ。箱の中に入っていた囚人たちがそれぞれ舞台前方に出てきて自由になった喜びを歌う囚人たちの合唱が始まると、オペラを見ている実感がさらに高まってきました。

レオノーレの複雑な心境を歌うアリア、ヤキーノとマルツェリーネの登場に続き、久々に浴びた太陽の光に別れを告げる囚人たちの悲しげな合唱、そして五重唱と、歌はもちろん、場面の展開とともに表情が見事に変わるバックのオケは、この作品の隅々までを知り尽くしたかのような演奏で舞台の雰囲気を盛り上げてくれました。

もうこのオケには脱帽です。

一幕が終わり、大きな拍手でホールが沸く中をアバドはピットから退場して行きました。アバドは半分以上(いやもっとかな?)は立ち上がっての指揮で、激しく指示を出す場面も多く、いつものことながら見ているこちらが心配になるほどエネルギッシュな姿を見せてくれました。

【 第二幕 】
最初の登場の時以上に期待が込められた大きな拍手でアバドがピットに迎えられます。

アバドの棒が動くと何ともいえぬ暗さと不安をそのまま絵に描いたような序奏が始まりました。序曲同様シャープなところはよりシャープに磨き上げているせいか、陰鬱な雰囲気がよく醸し出されています。

フロレスタンが絶望から始まりオーボエの明るい旋律に乗って歌うアリアまで一気に歌い上げます。オケとテノールの掛け合いがひとつの聴き所ともいえますが、特にテノールは後半に高音が続き非常に難しい場面です(実際、ちょっと辛そうでもありました)。
オーボエは吉井瑞穂さんが朗々と歌い上げてくれました。この時のオケの温かい響きも忘れられません。

ロッコとレオノーレが舞台中央に開いた墓穴を掘りながらの二重唱、続いてフロレスタンを加えての三重唱を美しいオーケストラの響きが支えます。ベートーヴェンらしいメロディが勇気と希望を感じさせてくれるような三重唱でした。

この後、ピツァロが一幕以上に勢いをつけて登場。
フロレスタンを刺し殺そうとするピツァロにレオノーレが銃を向ける場面は、想像していた以上に緊迫感がありました。それまで男性(フォデリオ)に扮していたレオノーレが帽子を取って長い髪を下ろすあたりも、同じ女性として感動的な場面でした。

ラッパの音が聞こえたかと思うと、大臣が到着し、あれよあれよという間にピツァロが大きなギロチン台にかけられてしまいました。極悪人とはいえ、ちょっとかわいそう coldsweats02

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レオノーレとフロレスタンの二重唱 「歓喜の歌」 に続いて長いフィナーレに入ります。(ちなみに、フィナーレの前にレオノーレ序曲3番の演奏はありませんでした。ストーリーの流れを中断したくなかったのでしょうか?)。

民衆や囚人たちによる歓呼の合唱。二幕の途中で現れた舞台後方の光がだんだん明るくなり眩しいほどです。

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妻レオノーレが自らの手で夫フロレスタンの鎖を解き放つ場面は、不覚にもジーンときてしまいましたweep

この後はレオノーレへの賛美、そして愛の勝利の合唱が続きますが、まるで自分もその一員になったかのような気持ちになってしまい、この時の心は舞台と同化していました。こんな気持ちになったオペラは初めてです。気持ちを入れ込んで鑑賞していたからなのでしょうか・・・。

フィナーレのプレスト、特に最後のシンコペーションが続くあたりはもうアバドの指揮も切れ味全開!それはもう最高にエキサイティングな幕切れでした。

大きな拍手と喝采の中、"ここまで聴きに来て本当に良かった!!!" と心から幸せを噛みしめて涙している自分がいました。

実際、チケットはもう諦めたほうがいいのかもしれない、と思った時もありましたが、"絶対に最後まで諦めてはいけない!諦めたら一生後悔するぞ!" というもう一人の自分の声が常にどこからか聞こえてきました。このフィデリオを観るために、いや、聴くために、色んな大きな力が私をここまで導いてくれたのだと思うと、本当に感慨無量の思いです。

フィデリオは、物語の舞台となる場所が刑務所だの地下牢だのと暗い所ばかりのため、視覚的な華やかさがない分、歌や演奏が重要なポイントとなるオペラであることは間違いなく、歌手とオーケストラの完成度の高さが要求される難しい作品です。

だからこそ、このオペラにはベートーヴェンならではの素晴らしい音楽がぎっしりと詰まっているのかもしれません。

また、ベートーヴェンは様々な要素をこの曲の中に閉じ込めていますが、そのどれもが人間そのものを描いたものであるからこそ、アバドの表現する音楽が心に突き刺さるほどに迫ってきたように思います。
特に、ベートーヴェンの持つ迫力と美しさ。その対照的な両面を見事に描いていたのはさすがアバドです!

これを超えるフィデリオとはもう出会えないでしょう。

アバドのオペラをもっともっと観たい!と思いました。

それにしてもマーラー室内管。
生き生きと歌う木管もいつものことながら魅力的ですが、弦の素晴らしさといったら・・・こんなにベートーヴェンを美しく演奏するオケが他にあろうかと度肝を抜かれるような場面がいくつもありました。

歌手の中で最も盛大な拍手を受けていたのは、やはりピツァロ役のドーメンでした。パルジファルのアムフォルタスの時も一段と大きな拍手を受けていたのを思い出します。あの時もそして今回も痛々しい姿が印象的でした(笑)。

アバドも歌手たちと一緒に何度も舞台に現れましたhappy01
そして、いつの間にかオケのメンバーもそれぞれ楽器を持ったまま全員ステージに上がり、舞台の上はまるで学園祭が終わったあとのようなお祭り騒ぎcoldsweats01

幕が完全に下りるとステージの上(幕のむこう)でオケのメンバーたちの大きな歓声が上がっていました。なんて素敵なオーケストラ!アバドにとってマーラー管は間違いなく大きな活力ですね。

そして、私にとってアバドはもっとでっかいエネルギーなのですheart01

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・

記念に一枚だけheart04

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向かってマエストロの左がタイトルロールのアニヤ・カンペ、そして右がマルツェリーネを歌ったハルニッシュ、その右がピツァロ役のドーメンです(ピンボケが悲しいぞcrying)。

席から見たピットと舞台

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この席を去るのが本当に名残惜しかったです・・・。

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フィデリオのプログラムとチケット。
プログラムは意外と小さくて薄いものが一冊用意されていただけでした。

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照明が美しい夜のモデナ駅。

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フィデリオの感想はまだまだ続きますcoldsweats01

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Comments

Vravi!
大変な「荒行」を乗り越え、「フィデリオ」の上演に立ち会われた思いがストレートに伝わりました。おめでとうございます。
06/10/13東京ルツェルンで可憐なモーツァルトを聴かせたハーニッシュ、2007年春に新国立劇場で「オランダ人」のゼンタを見事に歌いきったカンペ、同じ年ベルリン・シュターツカペレの「トリスタン」を歌ったフランツのフロレスタン、そして円熟の境地に達したドーメン・・・。
見事なキャストですね。これでは歌声だけで天井知らず。その上に天才集団MCOがピットに入り、マエストロが渾身の棒を振った!
・・・
しかし、Yukoさん、これで3年は「フィデリオ」が見聴きできなくなりましたね。

Posted by: IANIS | 29 December 2008 at 23:19

IANISさん、コメントありがとうございます!
いやー、本当にいくつものハードルを乗り越えての鑑賞でした。それにしても、感動を伝えるのって本当に難しいですね(^^;。このフィデリオが一日も早くCD化されることを願って止みません。

Posted by: ゆうこ | 31 December 2008 at 15:37

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